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Taku's World

2022/08/26

書斎の整理=終活

書斎の片付け、整理で1日を過ごした。思い切った。平成9年、教課審の配付資料を全部捨てた。おそらく、国研や国会図書館以外には現存していないであろう内部資料も含まれていた。捨てることは決別。教育展望に更生保護、それらも捨てた。どさりとあった各種会議資料。そこに掲載された関係者の名簿は全てシュレッターに掛けた。我が書斎、1/3は近世文学研究類。学生時代にのめり込み、新採時代に買い足したものが捨てられない。定本西鶴全集、古典文学叢書、徳川文藝類従全巻、寺島良安の和漢三才図絵に人倫重宝記、近世文学資料類従、日本庶民文化資料集成、日本文学史全巻。折口信夫全集、まだまだある。それに日本古典文学大系全巻、これは100巻を超える。学生時代に購入したものは700円から1000円。今や3000円から5000円だ。捨てられない。これらをやがては市立図書館に寄贈しようか。近世文学研究者には必須。暉峻康隆の「西鶴の評論と研究」は昭和40年代後半には2万5千円もした古本。すべて読んだわけではないが、それらを活用した体験は、例えば、髙田郁の「みをつくして料理帖」や「あきない世傳」を読む際にはバックDataになった。和漢三才図絵等公立図書館ではまず所蔵していないだろう。アルバイトに出て、いただいたアルバイト代をもって神保町の古本屋街に飛んだ頃の名残である。この後には教育書が並んでいた。そして、PCソフトの箱が。私の人生そのものである。某大なフロッピーにMO、CDにDVD、これらをどう処分しようか。

2022/05/04

みをつくし料理帖の舞台

 4月に入って高田郁の「みをつくし料理帖」。読み進めていくうちに作家高田郁の舞台設定に舌を巻いた。江戸の区割りを周到に再現している。
舞台の殆どは移転した俎橋付近のつる屋。九段坂に面していて、俎橋は飯田川にかかっていた。俎橋の対岸に創業文久元年の大丸屋米店があるとネット氏は報じている。俎橋向こうには靖国通りが走っているが、江戸期は武家屋敷でそんな通りはない。その先を右折すると神保小路に出る。それが現在の神田神保町さくら通り、すずらん通り。突き当たりが神田小川町の靖国通り。緩いカーブを当時のままに行くと土屋采女屋敷前に到る。現在の東京メトロ小川町駅、淡路駅辺りだ。往時はその隣が松平左衛門屋敷前。そこを北上。すると昌平橋手前で中山道にぶつかる。中山道は日本橋を基点に日本橋宝町、現三越(越後屋)、十軒店、今川橋を経て、この地に到り、上野広小路に進む。神田明神脇を抜けていくような道筋だ。
 昌平橋を渡る。そこは明神下。ご存知野村胡堂の銭形平次が住み、縄張りにしていた地とされているところである。この明神下通りは現在国道452号線、昌平橋通りと呼ばれている。この道の右手、現在の神田明神下交差点から上野方面に旅籠町2丁目、1丁目と続き、その先が金澤町で、その向こうは大岡備後守屋敷。澪や芳、おりょうに伊佐三、口がきけない太一らが住んだ長屋はこの金澤町にあった。金澤町とは前田藩ゆかりの地名である。現在の外神田三丁目の千代田区立外神田住宅(外神田3-5)地辺りで昌平小学校前だ。源斉先生の屋敷は昌平橋に近い旅籠町にあった。金澤町と神田明神下(昌平橋通り)を挟んで御臺所町、同胞町と続く。種市がそばを打っていた「旧つる屋」は御臺所町にあった。澪達の長屋と目と鼻の先である。外神田2丁目、外神田2-5あたりか。現在、近くにうなぎの明神下神田店がある。面白い。澪が手入れし、油揚持参でお参りしていた神弧のある化け物稲荷は古地図にもある。城下町の造りよろしく、明神下を嬬恋坂、鍵の手をさらに北上。武家屋敷にぶつかる。松平伊織屋敷で、そこは湯島天満宮下。その直前、松平采女屋敷と道路を挟んだところが化け物稲荷だった。澪達の長屋からそんなに近くはない。移転する九段坂下のつる屋からは遠くなる。余談ながら、つる屋を卑怯な手でいじめる登龍楼の主人は采女宋馬。この近辺に「采女」屋敷が多い。
 そばの「旧つる屋」は付け火にあって、俎橋、九段坂下に移転した。移転したつる屋まで歩くと30分以上はかかったであろう。通勤が遠くなったのである。
 みをつくして料理帖についてはこちらを。

2020/04/29

小松左京 復活の日に似すぎている今日

「復活の日」小松左京(角川文庫 初版:昭和50年10月30日 本書は第11版)
 主人公吉住らを載せた原子力潜水艦が浦賀水道に入り潜望鏡から見える、街の光景からこの話は始まる(プロローグ)。白骨化した死体、動物たちの死体、転がっている電車、草の生えた線路、そこは生き物のいない廃墟と化した日本の姿だった。この潜水艦には米国、ソ連、オランダらの乗組員がいるが、すでに彼らの祖国はなかった。全世界、全人類が消えたのである。
 表紙の裏に次のような書き出しがある。
 人類には明日があるか…。BC(生物化学)兵器として開発された新種の細菌、それはちょっとした偶発事故からでも、人類を死の淵に陥れる
 ----吹雪の大アルプスで小型機が墜落、黒焦げの乗員と部品や胴体の破片が発見された。この機には、秘密裏に開発された猛毒性を持つMM菌のカプセルを搭載していた。わずか摂氏5度でも気ちがいじみた増殖をはじめ、ハツカネズミが感染後5時間で98%が死滅!MM菌の実験データは冷酷に告げている。
 春になり雪どけがはじまると、奇妙な死亡事故が報告されはじめた……。
 人類滅亡の日も刻一刻と近づく。著者最高のSF長編小説。

 MM菌とは英国陸軍の秘密の細菌研究所で密かに開発していたMM87の実験過程で生まれた変異種で、上記にあるような猛毒性とキチガイじみた増殖率を有する危険なウイルスだった。それが暗闇組織に渡り、その組織がこのMM88を搭載した飛行機で運ぶ途中、アルプス越えに失敗して墜落。2月のことだった。3月、4月になると世界各地で異変が起き始め、野ねずみや羊が大量死。人も原因不明な事故や突然死が相次ぐ。米国でも乳牛がやられ七面鳥がやられ、犬が死に、中国ではアヒルが大量死して、新型ニューカッスル病と呼ばれた。一方、高い感染力と死亡率をもったチベット風邪と呼ばれる不明の新型インフルエンザが大流行。小児麻痺も流行。このMM88は核酸兵器でウイルスの核に入り込み、相乗効果を生み出す。生体に感染している、ありふれたミクソウイルス、つまりはインフルエンザやニューカッスル病等に乗って感染していく。しかも猛毒性でキチガイじみた増殖率で。他のウイルスに入り込むのだから見えない。しかも知られていない。当然である。もとはと言えば米国が宇宙から採取した菌を変異させ密かに培養していた秘密の菌を盗み出し開発していた細菌兵器だからである。
 この小説の結末から言えば、全世界のほ乳類が滅び全滅し、生存していたのは極寒の南極基地にいた人間だけ。そこに巨大な地震が発生する予知データが入り、米ソに存在する自動報復措置が稼働する可能性があることが判明。しかもソ連のそれは南極を向いていた。それを知った南極に生存していた4人が死を覚悟してワシントンとモスクワに向かい、そのスイッチをOFFにすることを試みられるが、間一髪間に合わず、互いの中性子爆弾の打ち合いが起こった。もちろん、すでにMM88にやられて人1人いない世界に、である。
 だが、南極を発つ前に偶然に中性子を浴びたMM88は変異して、ウイルスを殺し、無害になることが判明。その変異種を注射してでかけたのが主人公吉住であった。
 結果的に米ソの中性子爆弾による報復の仕合いは、MM88に中性子を浴びせることになり変異を呼び、収束することになるが、時すでに遅し。世界の人類は南極に残した人以外全滅したのである。偶然にも地下にいて中性子爆弾の被害をかすかに受けただけで生き延びた吉住はワシントンから歩き続けて、南アメリカの南極間近な地点にたどり着くという壮大なSFである。

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